
利尻山は日本百名山の「No.1」。深田久弥の『日本百名山』のなかで、深田は利尻山を「礼文島から眺めた夕方の利尻岳の美しく烈しい姿を、私は忘れることが出来ない」と言っています。
深田久弥ほどの登山家が忘れることが出来ないと言った利尻山の頂(いただき)から見える景色はどんな景色なんだろう。
普段は奥多摩や秩父周辺の山々を登っていますが、写真でしか見たことのない雄大な景色をこの目で見てみたい。
そう思い、利尻山に登ってきました。
この記事に書いてあること
コースルート・タイム
今回は天候が悪く、宿の方に送迎をお願いしており帰りの時間も決まっていたため、途中で引き返すことを前提に登りました。
また、終始雨だったのでほとんど休憩せず、寒かったため山頂にいたのも20分くらいでした。
登山データー
登山日付 | 2015年9月20日 |
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天候 | 雨 |
最低気温 | 5℃(山頂) |
最高気温 | 12℃(山頂) |
標高差 | 1498m |
トータル時間 | 9時間15分 |
ルート | 利尻北麓野営場(6:30)→利尻北麓野営場分岐(6:45)→6合目第1見晴台(8:15)→第2見晴台(9:30)→長官山(9:45)→利尻山避難小屋(10:00)→9合目(10:30)→沓形分岐(11:00)→山頂(11:30-11:50)→沓形分岐(12:20)→9合目(12:40)→利尻山避難小屋(13:00)→長官山(13:15)→第2見晴台(13:30)→6合目第1見晴台(14:20)→利尻北麓野営場分岐(15:30)→利尻北麓野営場(15:45) |
主な服装・持ち物
- ザック:North Face・30L
- シューズ:MAMMUT
- 服装:半袖、長袖のインナー、長ズボン
- レインウェア上下
- キャップ(ゴアテックス)
- 手袋(防水用)
- 行動食(じゃがりこ、羊羹、黒糖、ドライマンゴー1袋)
- 昼食(カップヌードル)
- バーナー
- 飲みもの2.5L(昼食用の水を含めて)
バーナーに関する注意事項
バーナーは飛行機に乗せられません。・・・・ということに気づいたのは、この登山のずっと後です。
というのは、通常は荷物預かりのX線で引っ掛かるはずなのに、このときはなぜかスルー。
バーナーは現地で調達しましょう。
利尻山はどんな山?
利尻山は北海道の利尻島に位置する独立峰です。
標高は1,721mとあまり高くないです。
独立峰で富士山と同じ形をもち、その雄大さから「利尻富士」と呼ばれています。
地元のひとは「北海道の富士山」と言っていました。
頂上には利尻山神社の奥宮があります。
天気がよければ、さえぎるものが何もない山頂から360°の大パノラマを楽しむことができるそうです。
今回はずっと雨が降っていて、終始ガスっていました。
正直、関東の山だったら行かない選択をしてますが、せっかく来たんだから雨登山でもいいから頂(いただき)を踏もうか、ということで登りました。
利尻ルール
利尻山では、環境保全と登山道の崩壊防止などのため、3つのルールがあり、これを「利尻ルール」といいます。
1、携帯トイレを使用する
ふだん携帯トイレは持っていかないので、前日に慌てて買いにいきました。
現地で買えるものがほとんどですが、慌てないためにも事前に自治体などのHPでその山の登山のルールや状況を仕入れておく必要があります。
2、ストックは先端部分にキャップをする
これはどこの山でも守るべきルールですが、特に利尻山の土壌は、手で触れるだけでボロボロ崩れ落ちてしまうほど脆く侵食されやすいそうです。
また、沓形コースとの合流地点から上部では極力使用しないようにとのことです。
3、植物の上に座らない、踏み込まない
利尻山のような火山礫の堆積した山は、植物の腐食土壌が薄く、人の踏み込みなどで腐食土壌が失われると登山道の侵食の進み具合が早いらしいです。
上記の3点は、どこの山でも気をつけるべきのとだと思いますが、山によってはこのように独自にルールがある山もあります。
遠方の山に行くときは特に、事前に調べておくとよいです。
利尻山の登山レベル
登山時間が長いため、7- 8時間の登山に慣れていることが望ましいです。
利尻富士町でのHPでは、鴛泊コースが中級者向け、沓形コースが上級者向けとしています。
鴛泊コースから行くのが定番のようです。
どちらも標高差が1000m以上あるので、ふだんから1000m以上の標高差がある山をバテずに登れていることが前提です。
途中崩落箇所などはありますが、技術というよりは体力勝負の山でした 。
コースタイムが長いのにエスケープするところがないので、気軽に登る山ではないと感じました。
東京から利尻山登山口までのアクセス
羽田空港から飛行機で稚内空港まで行き、そこからフェリーで行きました。
- 【飛行機】羽田空港→稚内空港:約2時間
- 【バス】稚内空港→稚内フェリーターミナル:約35分
- 【フェリー】稚内フェリーターミナル→利尻島のフェリーターミナル「鴛泊」:約1時間40分
※バスの発車時刻はANAの国内線に接続しているので乗り換えはスムーズです。
また、新千歳空港から利尻島まで飛行機がでていますが、1日に1便のようです。
登山口までのバスはなく、いちばん近いバス停は【温泉バス停】です。
鴛泊コースの登山口である【利尻北麓野営場】までは徒歩約40分です。
宿泊施設によっては、登山口への送迎を行っています。
今回は、送迎してくれる宿を探し、中原旅館さんにお世話になりました。
登山目当てで素泊まりで構わないのであれば、1泊6,480円(2名利用時)で泊まることができます。
歩ける範囲で夜ごはんが食べられるお店もあります。
鴛泊港より車で約20分のところにあり、予約をすれば港まで迎えに来てくれるということだったので、迎えにきてもらいしました。
出発から登山口まで
5時半に送迎の車を出してくれました。
この日は朝から雨。
何組か送迎の予約が入っていたそうですが、雨でキャンセルしたひとが多かったようで、結局行くことにしたのはわたしたちと年輩のご夫婦の2組だけでした。
本当に行くのか、雨対策の装備は持っているのかを何度も確認され、出発。
もう1組も同じ鴛泊コースということで、登山口である【利尻北麓野営場】に向かいました。
もう1組の年輩のご夫婦と、「頂上で少しでも晴れてくれればそれでいいよね」と言いながら。
登山口(標高220m)→利尻山避難小屋(標高1230m)
- 所要時間3時間半
- 標高差1010m
登山口から5合目くらいまでは緩やかな道でした。
登山口から歩いて15分のところに、「甘露泉水」という水場があります。
鴛泊コースの唯一の水場です。
4合目の「野鳥の森」を過ぎ、しばらくすると坂が少しずつ急になります。
5合目の「雷鳥の道標」では、天気も悪いし雷鳥が見られるのかなと期待していましたが、残念ながら見られず。
後で調べたら、「登山道を開いた頃に雷鳥が先導したという伝説によって道標が立てられた」らしく、実際にはいないのね・・・(ガッカリ)。
5合目を過ぎて、第一見晴台、第二見晴台、8合目の長官山までは急坂続きです。
今回はガスってて何も見えなかったので、すべてをスルーして登りましたが (悲)、天気がよければ礼文島が見えたり、この時期はナナカマドや紅葉が綺麗に見られます。
また、7月から8月の時期に利尻山で見られる花が多く見頃を迎えます。
- 利尻山の花:利尻島観光ポータルサイト「りしぷら」より
8合目から避難小屋まではやや平坦な道でした。
避難小屋(標高1230m)→利尻山頂(標高1718m)
- 所要時間1時間30分
- 標高差488m
ほぼ休憩なしで来ましたが、避難小屋で少し休憩を取りました。
とはいっても、雨で身体が濡れていてじっとしていると寒さが堪えるので、行動食を口に放り込むくらいの短い休憩でした 。
9合目を過ぎると、火山灰質の石が多くなり、浮石に注意しながら進む必要があります。
また、足場が悪く、崩落箇所も多くなります。
明らかに「ここ、崩れたよね・・・?」という箇所もありました。
無我夢中で登っていると、山頂に着きました。
登頂した喜びより「ようやく着いたか・・・」という疲労が大きかったです。
山頂にある利尻神社奥宮に無事に着いたことを感謝してお参りしました。
バーナーを使えるくらいの雨になっていたので、急いでお湯を沸かしカップヌードルを食べ、20分ほどで下山準備。
山頂は終始ガスっていて何も見えませんでしたが、かろうじてピークを向かえた紅葉が見えました。
晴れていたら素晴らしい眺めだったに違いありません。
悲嘆にくれていると雨でどんどん体温が奪われるので、名残惜しみながら下山しました。
山頂(標高1718m)→利尻北麓野営場(標高220m)
- 所要時間3時間30分
- 標高差1498m
下山は雨が強くなり、登りほど身体が温まらず、体力は残っていたので休憩はほとんど取らないで下山しました。
標高差が大きいので、雨の登山道は滑らないように気を付けなければならず、体力と神経を使います。
また、山頂付近は浮き石も多いので、落石に注意を払わなければいけません。
自分たち以外周りに人もいなくて心細く思いながら【利尻北麓野営場】に着いたときは安堵しました。
まとめ
関東では、1日中雨なら行かないので、長い雨登山は初めてでした。
晴れているときと雨が降っているときの登山はまったく違います。
防水対策、防寒対策、体力の調整など、目を配るところが多かったです。
また、体力のとられ方も晴れの日の1.5倍くらい早いような感覚でした。
利尻山は特に歩行時間が長くエスケープできるところがないので、「せっかく来たから」と言わず終始雨なら行かないという賢明な判断が必要だったと反省しました。
今回は雨登山の厳しさを知り、良い経験でした。