
まだ踏み入れたことのない南アルプスに行きたい!と思い、1泊2日で鳳凰山に行ってきました。
鳳凰山を選んだいちばんの理由は、名前がかっこいいから。
「鳳凰」って、伝説の鳥じゃん。
どんな山なんだろう。
選ぶ理由は単純なものです。
しかし、前日まで2日間とも雨予報。とりあえず登山口まで行って、撤退も視野に入れて様子を見ることにしました。
今回は、涸沢カールで出会った関西の山ボーイと甲府駅で待ち合わせて登りました。
この記事に書いてあること
登山データー
登山日付 | 2017年10月14日 |
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天候 | 曇り時々晴れ |
最低気温 | -1.5℃ |
最高気温 | 9.5℃ |
トータル時間 | 11時間 ※休憩:45分 |
ルート | 夜叉人峠登山口(6:15)・・・夜叉人峠(7:15)・・・大崖頭山(9:15-9:30)・・・南御室小屋(12:00-12:15)・・・薬師岳小屋(13:45-14:00)・・・薬師岳(14:10)・・・観音岳(14:55)・・・地蔵岳(16:00)・・・薬師岳小屋(17:15)【小屋泊(夕食・朝食付き)】 |
登山日付 | 2017年10月15日 |
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天候 | 晴れのち曇り |
最低気温 | -1.5℃ |
最高気温 | 9.5℃ |
トータル時間 | 5時間※休憩:1時間 |
ルート | 薬師岳小屋(7:00)・・・青木鉱泉(12:00) |
服装・持ち物
- ザック:The North Face(30L)
- シューズ:MAMMUT
- 服装:半袖、長袖のインナー、長ズボン
- レインウェア上下
- フリース
- ダウン
- 2日目の着替え
- ゲイター
- キャップ
- 手袋(防寒用の薄手のものと防水用の厚手のもの)
- ニット帽
- バーナー
- 水のいらないシャンプー
- 汗拭きシート
- 化粧品+化粧品落としシート
- ホッカイロ(貼る用と貼らない用)
- 行動食(じゃがりこ、ようかん、せんべい、ドライマンゴー1袋、クッキー、塩タブレット)
- 飲みもの1.5L
- 1日目の朝食(おにぎり2個)
鳳凰山ってどんな山?
鳳凰山は、南アルプスにある薬師岳・観音岳・地蔵岳の3つの山の総称です。
いちばん高いのは観音岳で標高2840mです。
日本百名山にも選ばれていますが、他にも新日本百名山、新・花の百名山、山梨百名山にもなっています。
薬師岳と観音岳の山頂は尾根上にあり、森林限界より上なので、天気が良ければ、北岳や富士山、八ヶ岳などの日本を代表する山々を眺めることができます。
地蔵岳は、山頂近くに「オベリスク」という、それはそれは高い岩塔があり、そこからは仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、富士山が見えます。
鳳凰山を縦走するルートはたくさんあり、小屋も多いので、自分の体力や何をメインとするかで計画を立てられるのも良いところです。
早朝バス目掛けて前日から甲府駅にスタンバイ
登山口である夜叉人峠までは、甲府駅から直通でバスが出ています。
コースタイムが長いので、是が非でも4:35分甲府発のバスに乗りたいところ。
というかこれに乗れないと、宿泊予定の薬師岳小屋まで間に合いません。
前日の最終電車で甲府駅に移動します。新宿方面からは「特急かいじ」が便利です。0時30分過ぎに甲府駅に着きました。
お金があるひとは、甲府駅周辺のホテルに泊まるのでしょう。
お金のないわたしは、甲府駅南口から徒歩5分のところにある「ビックエコー」で前泊。
フリータイムで入ると3000円くらいで収まります。
漫画喫茶も探したのですが、甲府駅から手軽に歩ける範囲にはなさそうでした。
ちなみに、朝4時に甲府駅で待ち合わせた関西の山ボーイは、甲府駅前の24時間営業している居酒屋で時間を潰したのとのこと。
ここでひとつ注意点があります!
【バスは早めに並んでおくべし】
南アルプスの玄関口である広河原・北沢峠・夜叉人の登山口は、マイカー規制があります。
甲府駅からバスが出ているため、たくさんの登山客がこのバスを利用します。
シーズン中は臨時のバスも出ているようですが、朝4時半の甲府駅にできる長い長い行列は異様なほどです。
今回は、4時にバス停に向かいました。
雨予報にも関わらず、すでに15人前後の登山客が並んでいました。
夜叉人登山口→夜叉人峠はちょうどよいウォーミングアップ(所要時間:1時間)
夜叉人峠登山口には6時前に着きました。どんより曇り空でしたが、雨は降っておらず。
予報もとりあえずは曇りのようです。
ということで、1泊2日の鳳凰山登山は決行することにしました。
前日に買ったおにぎりを食べて出発。
ちなみに、登山口の近くにお店はないので、朝ごはんはあらかじめ持ってくるか甲府駅で買いましょう。
夜叉人峠登山口の標高は1380mで、夜叉人峠は1770mなので、標高差は約400mです。
そこまでの急坂ではなく、これからの長い山行のウォーミングアップにちょうどよい坂です。
樹林帯を上っていきます。真っ白だった空に、少しだけ光が差してきました。
登山口から夜叉人峠は1時間ほどで到着しました。少し雲が晴れて、近くの山が顔を出してくれました。
天気が良ければ、白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)の眺めが良いらしいです。今回は残念ながら拝めず。水分補給のみにし、先に進みました。
夜叉人峠小屋→南御室小屋までは淡々とした登山道をひたすら上る(所要時間:4時間45分)
夜叉人峠を越えると、再び樹林帯です。南御室小屋の標高は2720mなので、ここで一気に1000mほど上ります。
「一気に」と言いましたが、「山と高原地図」のコースタイムは4時間半。
ざっくり言うと、1分間に3m上る計算です。なんとなく、どの程度の坂かイメージできましたか?途中で木と木の間から富士山が見えました。
たまに富士山を見ながら樹林帯を進みます。登山道はピンクのテープもしっかりしていて、迷うことはないです。
夜叉人峠から2時間しないくらいのところで、大崖頭山(おおがれあたまやま)に到着しました。
標高2186mの山ですが、看板は発見できず。
景色は相変わらず白が多め。
雨じゃないだけマシかあ、とポジティブに考えてみる。
紅葉も残っていました。この季節の登山は、紅葉で彩られる木と立ち枯れた木が混じっていて、物思いにふけってしまいます。
秋と冬が混じるこの季節の登山もなかなか乙です。
大崖頭山から約2時間半のところにある南御室小屋を目指します。
途中、ルートを少し外れたところに「辻山」という山があり、「山と高原地図」によると展望が良いらしいです。
今回は曇り空だし先は長いので、辻山には寄らず、南御室小屋を目指しました。
途中の苔がものすごくきれいでした。
雨露のおかげで、苔の緑がより濃くなっています。
雨登山のいちばんの楽しみは苔を眺めること。苔だけは、晴れているより天気が悪いときのほうが見ごたえがあります。
「辻山」から南御室小屋までは20分ほど。今回の南御室小屋はとても静かでした。
聞くと、この天候でお客さんはいないとのこと。
「今日山に入るのはよっぽど自信あるか、ただの身の程知らずだな」と小屋のおじさん。
・・・わたしたちは後者のほうです。。。
とはいえ、天気は良くないですが雨が降っているわけではなく。
小屋のおじさんがそこまで言うのはなぜか。このあと、鳳凰山山頂で思い知ることになります。
南御室小屋では、ココアをいただきトイレを借りて出発。
ちなみに、トイレは衝立の中に小さな川がありそこをまたいでする野生スタイル。水場もあり、無料で水が汲めます。
森林限界で景色が一転、南御室小屋→薬師岳小屋(所要時間:1時間半)
南御室小屋を出て1時間しないくらいで、森林限界になります。すると、景色が一変。
急に大きな岩がゴロゴロ出てきます。下は砂で、雨が降ったときは登りにくそうです。
薬師岳小屋まではこんな感じの道が続きます。
髪の毛がボサボサになるくらいの風を急に感じました。森林限界を越えると、遮るものが何もないので強風をまともに食らいます。
ようやく薬師岳小屋に到着!
立っていられないほどの強風を浴びながら三山縦走
到着してホッとしたのも束の間、大きな決断を迫られます。
三山を目指すべきか否か・・・
小屋のおじさん曰く。
「明日は結構な雨が降る、尾根上はかなりの強風。体力があるなら行ってもいいけど、おすすめしない。さっき山のツアーガイドがおばさん一人を案内しに出ていったが、かなりやばそうだった。帰ってこれるかな、あそこのガイドやばいんだよね、客に結構無茶させるんだよね」
・・・とのこと。
う~ん・・・天気は悪くなく、雨は降りそうにもありませんでした。
とりあえず、歩いてすぐの薬師岳に行って様子をみようかということになりました。
小屋で買ったカップラーメンを食べて出発。時刻は14時でした。もし地蔵岳まで行くとしたら、往復4時間くらい。
どちらにせよ急ぎ足になりそうです。
薬師岳小屋を出て、10分ほどで薬師岳に到着。
薬師岳小屋に到着する前は真っ白で何も見えませんでしたが、少し晴れて山が見渡せるようになりました。
尾根に出たとたん、今まで経験したことのないくらいの強風が体にぶつかります。
どのくらいの風かというと・・・
わたしは女性としては足腰が強いほうですが、それでもしっかり踏ん張っていないと、体が持っていかれるくらいの強風です。
これが薬師岳小屋のおじさんが言っていた風か・・・
そして南御室小屋のおじさんが、「こんな日に行くなんて」と言っていたのはこの風のせいか・・・
まともに立っていられないくらいの強風ですが、美しい尾根と非常識な風にテンションMAX。
地蔵岳を目指すことにしました。
ラッキーなことに、天気が回復してきて美しい尾根の先には富士山が見えました。
ここから先はずっと尾根上を歩きます。
膝より下くらいの背丈のハイマツが、道路の両脇に並んでいる花のように生えています。
そんな登山道が50分ほど続き、鳳凰山の2つ目の山頂である薬師岳に到着です。
薬師岳から地蔵岳の道は、2箇所ほどググッと下りって上るところがあります。
そのほかはなだらかな道です。
大きく切り返した右斜め上のとんがりが見えるでしょうか?そこが地蔵岳の「オベリスク」です。
右に視線をずらすと、八ヶ岳らしき山々と雲海が見えました。
観音岳と地蔵岳の間で木の塔発見。
1ヶ所目の切り返しを過ぎると、オベリスクが見えてきました。
ここら辺から空に少しだけ青が戻ってきました。
奇跡!
観音岳から1時間ほどで地蔵岳に到着です。地蔵岳山頂の標識は、オベリスクの手前にあります。
だから、オベリスクにたどり着けなくても登頂したのとになるからだいじょうぶ(笑)
時間がなかったので、ちょっとだけオベリスクに登ってから帰ることにしました。
あともう少しでてっぺん、というところで先に進めず。てっぺんに登る術を探っている時間もなかったので、今回の挑戦はここまでにしました。
あとからオベリスクのてっぺんに行ったひとの話を聞いたら、正面から回り込んで裏手側に登れるところがあるとのこと。
次回こそは!
オベリスクからの眺めは最高に気持ち良いです。
仙丈ヶ岳や甲斐駒ヶ岳が光の先に聳え立っていました。
そして180度回転すると、富士山が見えました。
感動に浸っていると刻々と夕日の時間が迫ってきます。
ヘッドライトは持参しているとはいえ、その前に小屋に辿り着いていなければ。来た道を引き返します。
この頃、あんなにガスっていた空が晴れ、振り返ると尾根が西日に照らされて、小さいけれど猛々しいオベリスクが聳え立っているのが見えて、何とも美しい光景を拝むことができました。
オベリスクを出発してから2時間ほどで薬師岳に戻ってきました。
行きは見えていなかった日本No.2の高さを誇る北岳が夕陽を浴びていました。
地蔵岳から薬師岳方面に歩いて来た場合、北岳は右手に見えます。
薬師岳まで来ればひと安心。夕陽をたっぷり眺めてから小屋に戻りました。
リニューアル直後のピカピカで快適な薬師岳小屋
薬師岳小屋は2017年8月にリニューアルしたばかりの小屋です。
今回は、天候不良でキャンセルが相次いだとのことで、宿泊客はなんと3組6人でした。
2階建ての木のぬくもりがただよう小屋です。寝るところは4~5人で仕切られています。
(ピーク時は何人押し込められるのから・・・)
今回は6人しかいないので、贅沢に1組1部屋の個室状態でした。
夕食はおでんでした。美味しかったですが、男性は足りないかもしれませんね。
夜はすっかり晴れていたので、薬師岳山頂まで星を見に行きました。
強風でしたが、満点の星空でした。
これぞ山泊の楽しみのひとつです。
スリップ注意の雨の中での下山
2日目は、1日目の満天の空は幻かと思うほどのどんよりとした雨。
朝からレインウェアを着て出発です。
当初の予定では、2日目に三山を縦走して鳳凰小屋に行き、いくつもの滝を通って青木鉱泉に下山する予定でした。
今回は雨が降っていたので、ルートを変更し、薬師岳小屋から直接青木鉱泉に下りる中道のルートで下山することにしました。
雨だから仕方ないとはいえ、このルートは退屈でした。
コースタイムの4時間、ただひたすら樹林帯の中を下山します。
(最後の30、40分はアスファルトです)
唯一の見所と言えば、薬師岳小屋から1時間しないところにある「御座石」という大きな岩でしょうか。
難しくなく最短なルートではありますが、もうここを通ることはないでしょう。
青木鉱泉で温泉に入りバスで韮崎駅へ
下山したあとの楽しみは温泉。
その名もズバリ「青木鉱泉」というお宿の立ち寄り湯を利用しました。
料金は1000円です。
青木鉱泉HP
https://www.mountaintrad.co.jp/~aokikosen/
青木鉱泉は、わずかに白濁した弱酸性・無臭のお湯です。登山ができる春から秋までの期間に営業しています。
メインのお客さんは登山客ですが、一般のお客さんも結構いました。バスは山梨中央交通から出ていて、1日に3,4本しかありません。
韮崎駅までの所要時間は約1時間と長いので、乗り過ごして大枚はたいてタクシーを使うことにならないよう時間には十分気をつけましょう。
山梨中央交通のHP
http://www.y-c-k.com/tozan.html
まとめ
尾根上でのまっすぐ立っていられないほどの強風をはじめて体験しました。
今回は三山を縦走しましたが、勇気ある撤退を常に前提として登山をすることが大切だと改めて感じました。
下山はまったく面白くないものでしたが、メインの稜線歩きと三山縦走の時のみ奇跡的に晴れてたのは幸運でした。